第11章・理不尽
坂田はプログラム以前の問題だった。
インデントが滅茶苦茶だった、viや秀丸を混在してつかっていたのでネストがグチャグチャになっていた。
スペースで4行ネストしてるかと思えば8行タブで作業をしたり。私には理解不能だった。
そんなプログラムソースは凄まじい物だった。
ファイル分けされていない3000行ものソース、似たような処理が各所に散らばっており凝縮性など微塵も感じられなかった。もちろん他チームとの結合部分もそこら辺に散らばっていた。
コピペで茹で上がった立派なスパゲティープログラムだった。佐藤はファイル分割が出来ると言う事を知らなかった。*1
たとえファイル分割を知っていても、分割したファイルをヴァージョン管理ソフトのプロジェクトに追加なぞ出来なかっただろう。
佐藤は取り合えず新しい機能はコピペが基本だった。
この本で現場の汚いソースを紹介しているが、もしかしたら1位を取れるかもしれない。
そんな連中と4ヶ月も仕事をこなしていると、凄まじくストレスが溜まってきた。自社に帰社した時に部長*2に「現場を変えて欲しい」と頼んだ。
部長は面倒そうに (^〜^;)ゞ<もうちょっと頑張れ! などと言って私をさとした。
実際には、自社で待機している期間、余計な営業のコストが勿体ないだけなんだがね。
そして部長に違う話を切り出された「主任になって営業をしない?」
提示された主任の条件は
月27万の給与をやるが残業代が付かない
現場の仕事は最低限でいい*3
毎月250時間の労働時間
夕方から会社に帰り派遣の営業をする
正直なところ割に合ってない。しかし子供と嫁がいて貧しくて生活が成り立っていないオレは、月27万の安定した給与に魅力を感じた。*4
当時オレはお金がなく擦り切れたユニクロのチノパンを買い換えるのに真剣に悩み、派遣先の食堂で素ウドンと具なしカレーしか頼めなかった。
普通の会社員ならば隠れてバイトが出来るかも知れない。だがソフト開発ってのは労働時間が不定期でバイトが出来ない仕事だ*5。あまり副業は信じてなかったし。
そんな理由もあり仕方なく主任の話を受け入れた。
それまでも忙しかったがさらに寝る時間がない忙しい時間が待っていた。家に帰り子供の顔を見る事も出来ず。妻はオレに対しドンドン冷たくなっていった。
オレの営業は順調だった。夜商売で人に対して営業の話術はすでに備わっていたからだ。*6
しかし、そんな営業と反するように佐藤と一緒の現場でのパワーハラスメントはエスカレートしていった。
殴るフリをしたり、イスを蹴ってきたりして最悪だった。今のオレならば一瞬で殴ってるだろう。
オレには子供と嫁がいたし技術力も無かったので我慢するしかなかった。当時会社をクビになったら次の月から生活できない事もオレは十分理解していた。求職者になって親に頼るのはオレのプライドが許さなかった。
主任になって数ヶ月した時にもう一度現場の状況を部長に伝えた。さすがに話の内容を聞いて(3次)の大手派遣会社にクレームの電話を入れた。
部長は、「(3次)の社員としてわが社からオレを貸し出してる*7状況だが見過ごせないパワハラを受けているのに放置とはどう言う事だ」と言った。*8
次の日、現場にいる(3次)の主任*9と現場にはいない(3次)の課長が私のところに来て謝った。しかし問題の元凶の佐藤については、「別経由で今の現場にいるので、佐藤には何も言う事は出来ない」と言われた。*10
ちょうどプロジェクトの節目と重なり、新しいプロジェクトに佐藤・坂田は配置換えになった。
さて、佐藤なんで(2次)の正社員ではないのにこんなに暴れる事が出来るのか?
(2次)の会社の課長に平江(40後半)と言う人物がいる。佐藤は別の3次受けであるG社の社員だ。
この平江氏はG社の会社の元社員だ。
今の現場以外で佐藤は、まともに使えない人物でありG社的にはずっと(2次)に放り込んでおきたい。
平江氏は将来(2次)を退職した後、G社に天下る予定である。
そんなねっとりとした政治的な理由があったので佐藤はよっぽどの事が無い限り契約打ち切りになる事にならない。
佐藤もその事をフルに利用してやりたい放題だった。
嗚呼、社会って理不尽Orz